ダブルケアの定義
ダブルケアとは、育児と親族などの介護を同時に担う状態を指しています。
横浜国立大学の相馬直子教授と英国ブリストル大学の山下順子上級講師によって創られた概念です。
一つ一つも大変なのに、同時に複数の責任や負担がかかることで、求められることをこなせないといった苦痛や葛藤を感じているケースが少なくありません。
問題が複合的になってきたときの相談相手がいないこともよくあります。
なお、育児や介護やその程度に限らず、多様なケアの重なりは全てダブルケアと言えます。
私たちの身近にいるダブルケアラー
ダブルケアをあまり身近に感じたことがない、特別な方に起きる問題だと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、このダブルケアという状態、課題は非常に多くの方に起きていて、私たちにとって身近な問題です。
ソニー生命と上述の相馬先生たちとの調査によると、ダブルケアにいま直面している人は16.3%、過去にダブルケアを経験した方を含めると、ダブルケアを経験したことがある人は全体のなんと29.1%にも及びます。
経験をしていなくても「数年先にダブルケアに直面する」(7.5%)を加えた、“ダブルケアが自分事の問題”という人の割合は36.6%にもなります。
性年代別にみると、ダブルケアの経験率は、男女とも年齢が上がるにつれ高くなり、50代男性では33.1%、50代女性では41.1%でした。
▼参照
ソニー生命調べ ダブルケアに関する調査2018 https://www.sonylife.co.jp/company/news/30/nr_180718.html
これからは誰もが複合的ケアの当事者になる
また、今後ますますダブルケアに直面する人は増えていくと考えられます。
・少子化、晩産化、高齢化の同時進行でライフイベントの重複の可能性が高まる
・そもそも「男性が働き女性が再生産を担う」「たくさんのケアの担い手がいる」時代は様々な条件が重なったごく一時期のもの
・地域・親族ネットワークの縮小・変容
・会社は個人の雇用を支えきれなくなっている
・労働人口の減少と急激な高齢化の下でケアの担い手は家庭負担が予期される
・100年人生の中でケアに直面しない人などいない
ダブルケアラーが直面する問題
ダブルケアラーが直面する問題には以下のようなものがあげられます。
・複数ケアを同時に満たそうとするための負担
・精神的、物理的、経済的なサポートをこなさなくてはならない
・ケアのマネジメント(認知・交渉・調整・葛藤)、複数のケアに係る決断の重さ
・さまざまな役割を複合的に持つことにおける葛藤
・「私はそこまでケアをしているわけではない」
・どこに相談に行ったらいいかわからない
・行政窓口がが違うことによる負担や戸惑い
・一つ一つの話はできても複合的になってきたときに話し相手がいない
・総合的な相談相手の不在
・ケアラー自身の疲弊
など・・・
ダブルケアラーを左右する三大要因
そんなダブルケアラーを左右する要因として、大きく以下の三つの要素があります。
◎規範・通念:「介護、子育ては~~すべき」
◎資源:友人、親族、地域のネットワーク、サービス、時間、意欲、お金など
◎制度:子育て支援、母子保健、教育、年金、医療、介護制度、障がい支援、ひとり親、生活困窮、再就職支援など
※上記内容は2018年12月13日(木)川崎市男女共同参画センターにて開催した「ダブルケアとは~最新の実態分析から見えてきたこと~」横浜国立大学大学院国際社会科学研究院教授 相馬直子先生の講座を出典元とし、一部をダブルケアかわさきにて編集・加工して文責を負っています